BtoB広告規制完全ガイド|薬機法・景品表示法の適用判断と対策【2025年版】
目次
- BtoB広告における規制の基本概念
- BtoB広告・資料の種類と特徴
- 薬機法vs景品表示法:適用判断の決定的な違い
- BtoB広告の法規制該当チェックフローチャート
- 薬機法適用外の場合の表現自由度とリスク
- 実務対策:教育用資料の位置づけと社内共有
- よくある質問と回答

BtoB広告における規制の基本概念
BtoB(Business to Business)広告は、一般消費者向けの広告とは異なる規制適用の考え方が存在します。多くの企業が見落としがちなのが、「BtoBだから薬機法や景品表示法は関係ない」という誤解です。
実際には、BtoB広告においても薬機法の適用可能性があり、適切な判断基準を理解することが重要です。
なぜBtoB広告規制が重要なのか
- コンプライアンス違反のリスク回避
- 営業資料の効果的な活用
- 教育用資料の適切な管理
- プレスリリースでの表現最適化
BtoB広告・資料の種類と特徴
BtoB向けの広告・資料には、以下のような種類があります。それぞれ異なる規制適用の可能性があるため、種類別の理解が不可欠です。
1. 営業担当者向け資料
特徴:
- 営業現場での商品説明に使用
- 技術的な詳細情報を含む
- 効果・効能の具体的な説明が必要
規制リスク: 高(薬機法適用の可能性大)
2. 販売店向け資料
特徴:
- 販売促進を目的とした情報提供
- 商品の差別化要素を強調
- 売上向上のための訴求ポイント
規制リスク: 高(薬機法適用の可能性大)
3. 業者向け資料
特徴:
- 卸売業者や流通業者向け
- 商品の流通・販売に関する情報
- 市場データや競合分析を含む
規制リスク: 中(内容によって薬機法適用の可能性)
4. 教育用資料
特徴:
- 知識習得や理解促進が目的
- 学術的・技術的な情報提供
- 販売促進が直接的な目的ではない
規制リスク: 低(適切な位置づけにより薬機法適用外となる可能性)
5. 報道機関向け資料(プレスリリース)
特徴:
- 企業の発表事項を報道関係者に提供
- 客観的な事実の伝達が中心
- 広く一般に公開される可能性
規制リスク: 高(薬機法適用の可能性大)
薬機法vs景品表示法:適用判断の決定的な違い
景品表示法の適用範囲
規制対象: 一般消費者向けの表示
BtoB広告への適用: 非該当
景品表示法は一般消費者の自主的かつ合理的な選択を確保することを目的としているため、BtoB広告は原則として規制対象外です。
詳細はこちら: 消費者庁「景品表示法の概要」
薬機法の適用範囲
規制対象: 薬機法の広告三要件を満たすもの
BtoB広告への適用: 該当の可能性あり
薬機法の広告三要件
薬機法では、以下の3つの要件すべてを満たす場合に「広告」として規制対象となります:
①顧客誘引の意図が明らか
- 商品・サービスの購入や利用を促す意図
- 直接的な販売促進が目的
②商品名が明らか
- 特定の商品・サービスが識別できる
- ブランド名や製品名の記載
③一般人が認知できる状態
- 重要: 「一般人」とは「広告主以外の人」という広い概念
- BtoB向けであっても、広告主以外が認知可能であれば該当
BtoB広告でも薬機法が適用される理由
「一般人が認知できる状態」の解釈が鍵となります。薬機法における「一般人」は、広告主以外の人を指すため、以下のような場合でも適用される可能性があります:
- 営業担当者が顧客企業に提示する資料
- 販売店に配布する商品説明書
- 業界関係者向けのプレスリリース
BtoB広告の法規制該当チェックフローチャート

Step 1: 資料の目的確認
質問: この資料は何のために作成されたか?
- 販売促進目的 → Step 2へ
- 教育・情報提供のみ → Step 3へ
Step 2: 薬機法三要件チェック
①顧客誘引の意図はあるか?
- Yes → 次の要件へ
- No → 薬機法適用外
②商品名は明確か?
- Yes → 次の要件へ
- No → 薬機法適用外
③広告主以外が認知できる状態か?
- Yes → 薬機法適用あり
- No → 薬機法適用外
Step 3: 教育用資料の位置づけ確認
質問: 資料の位置づけは適切に管理されているか?
- 適切な管理 → 薬機法適用外
- 管理不十分 → 薬機法適用の可能性
判定結果に基づく対応
薬機法適用あり:
- 承認・認証・届出の範囲内での表現
- 虚偽・誇大表現の禁止
- 適切な根拠データの準備
薬機法適用外:
- 表現の自由度が高い
- ただし、虚偽・誇大表現のリスク管理が必要
薬機法適用外の場合の表現自由度とリスク
表現の自由度
薬機法の適用がない場合、以下の表現が可能になります:
効能効果の表現
- 承認の範囲を超えた効果の説明
- 実際の使用結果に基づく具体的な効果
安全性の表現
- 科学的根拠に基づく安全性データの提示
- 副作用情報の詳細な説明
事実の表現
- 臨床試験データの詳細な開示
- 競合製品との客観的比較
潜在的なリスク
虚偽・誇大表現のリスク
- 事実と異なる情報の提供
- 過度な効果の強調
- 根拠のない安全性の主張
情報伝達の阻害
- 過度な誇張による信頼性の低下
- 正確な情報伝達の妨げ
- 資料本来の目的の達成困難
二次利用のリスク
- 教育用資料の広告目的での無断使用
- 社内での位置づけの混乱
- 意図しない薬機法違反
実務対策:教育用資料の位置づけと社内共有
教育用資料の適切な管理
教育用資料は薬機法適用外となる可能性が高いものの、適切な位置づけと管理が不可欠です。
1. 社内での位置づけ明確化
文書化すべき内容:
- 資料の作成目的
- 使用対象者の限定
- 使用場面の制限
- 管理責任者の設定
2. 資料への明記事項
必須記載事項:
【重要】この資料について
・これは教育用資料です
・販売促進目的で作成されたものではありません
・無断転載・転用を禁じます
・そのまま引用等を行うと薬機法に抵触する可能性があります
・「広告」と表現の範囲が異なることにご注意ください
3. 社内教育の実施
教育内容:
- 薬機法の基本的な考え方
- 「広告」と「教育用資料」の違い
- 資料の適切な使用方法
- 無断転用防止の重要性
攻めた内容の広告利用防止策
1. アクセス管理
対策:
- 資料の配布先を限定
- 電子ファイルのパスワード保護
- 印刷物の配布管理
2. 使用許可制度
対策:
- 資料使用前の承認制度
- 使用目的の事前確認
- 適切な使用方法の指導
3. 定期的な監査
対策:
- 資料の使用状況確認
- 不適切な使用の早期発見
- 改善指導の実施
よくある質問と回答
Q1: BtoB向けの営業資料でも薬機法の規制を受けるのでしょうか?
A1: はい、薬機法の三要件(①顧客誘引の意図、②商品名の明示、③一般人の認知可能性)を満たす場合は、BtoB向けであっても薬機法の規制対象となります。特に「一般人」は「広告主以外の人」を指すため、営業先の企業担当者も含まれます。
Q2: 教育用資料なら何でも書いて良いのでしょうか?
A2: 教育用資料は薬機法適用外となる可能性が高いものの、虚偽・誇大な内容ばかりでは資料の目的を果たせません。また、無断転用により広告として使用されるリスクもあるため、適切な位置づけの明記と管理が必要です。
Q3: プレスリリースの薬機法適用はどう判断すればよいでしょうか?
A3: プレスリリースは一般に公開される性質上、薬機法の三要件を満たしやすく、規制対象となる可能性が高いです。特に新商品の発表や効果・効能に関する内容を含む場合は、承認内での表現が必要です。
Q4: 景品表示法はBtoB広告には適用されないのでしょうか?
A4: 景品表示法は一般消費者向けの表示を規制対象としているため、BtoB広告は原則として適用外です。ただし、BtoB取引でも最終的に一般消費者に影響を与える可能性がある場合は、注意が必要です。
Q5: 社内で教育用資料の位置づけを共有する最も効果的な方法は?
A5: 以下の方法が効果的です:
- 資料に明確な用途制限を記載
- 定期的な社内教育の実施
- 使用許可制度の導入
- 不適切使用の監査体制構築
まとめ
BtoB広告における薬機法・景品表示法の適用は、一般消費者向け広告とは異なる複雑な判断が必要です。重要なポイントは以下の通りです:
重要ポイント:
- 景品表示法はBtoB広告には適用されない
- 薬機法は三要件を満たせばBtoB広告でも適用される
- 「一般人」は「広告主以外の人」を指す広い概念
- 教育用資料は適切な管理により薬機法適用外となる可能性
- 社内での位置づけ共有と管理体制が重要
BtoB広告の適切な管理により、コンプライアンスを確保しながら効果的な情報発信を実現できます。定期的な社内教育と専門家との連携により、安全で効果的なBtoB広告活動を継続していくことが重要です。
本記事は薬機法・景品表示法の一般的な解釈に基づいて作成されています。具体的な案件については、薬事法務に詳しい専門家にご相談ください。
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